【レポ】分け隔てることのない馬喰町バンドの普遍性(180602@渋谷HOME)

川床のレコ発イベントにて、馬喰町バンドを観てきました。
これまで自分が足を運んできた馬喰町バンド出演イベントと比べると、少し異質というか、普段交わりにくいバンド同士の対バンのように感じました。
しかし、そんなイベントだからこその発見がありました。

フロアの盛り上がりがすごい

馬喰町バンド演奏時のフロアの盛り上がりがすごかった!オープンから参加していましたが、この日の出演者の中では一番盛り上がっていたと思います。かつ、自分が観てきた馬喰町バンドのライブの中でも、一番と言っていいんじゃないかという盛り上がりでした。
自分の推測ですが、今回のライブには馬喰町バンドのファンはそんなにいなかったんじゃないかと思います。では誰が盛り上がっているのかといえば、(これも推測ですが)おそらくライブの出演者を含めた初見の方たち。そういう人たちに馬喰町バンドの演奏がガンガンウケているのを目の当たりにして、「なんで初見なのにこんなにウケがいいんだろう?」と頭の隅で考えながら観ていました。


聴き手を惹きつける普遍的な要素

どこで盛り上がっているのかを見ていると、たとえば「曲の始まり」「テンポチェンジなど、展開の変わり目」「楽器のソロ」なんかで歓声が上がっている印象でした。
これらって音楽において、なんとはなしに聴いていて一番目につく部分だと思います。そういう、音楽においてとても普遍的な部分で、馬喰町バンドはめっちゃキャッチーで在ることができているのではないか!?と感じたのでした。

馬喰町バンドの醍醐味が詰まったセトリ

馬喰町バンドの曲は割と満遍なく良い曲が多いと、いちリスナーとして思っていますが(つまり代表曲とそれ以外の曲に、あまり質的に乖離がない)、この日のセトリはとりわけ良かったな~と思います。いうなれば、馬喰町バンドのおいしいところがわかりやすく打ち出されてる曲ばかりでした。
セトリは以下。

  1. 東京オーバードライブ
  2. ゆらゆら
  3. 在処
  4. なかうちくるまえくっとさけるまでゆけゆけ
  5. 五月
  6. わたしたち
  7. ヒトのつづき

"東京オーバードライブ"は民族音楽的な音階から静かにじわじわと始まる曲。儀式の始まりのような静けさから徐々に音が重なっていき、歌い出しでは畳み掛けるようなラップが繰り出され、ガッツリ心を掴まれます。オープニングとして馬喰町バンドの世界観に引き込んでいくにはぴったりな曲だと思っています。
途中切り込むように始まる尺八のソロも耳を引く聴き所になっており、歓声上がってました。

‎馬喰町バンドの"東京オーバードライブ"をApple Musicで


"在処"や"なかうち~"は途中でテンポチェンジがある曲。テンポが変わり曲の空気がガラッと変わる瞬間、私は聴く度にいつもえもいわれぬ高揚感や血の騒ぐ感覚を覚えていますが、この日のフロアの反応も同じで、こちらも特に歓声が上がる場面だったように思います。
また、この2曲も「曲の始まり」が印象的な2曲で、土着的なリズムから始まります。これに割とすぐに身体が反応して踊り始めている人がいたのが、自分は結構驚きでした。

youtu.be

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民謡とか民族音楽のリズムって、やはり日本人を本能的に惹きつけるのではないか?

これがこの日最大の発見でした。
馬喰町バンドの武さんは「日本の伝統的な音楽も、ジャズなどの西洋音楽と同様に、自分たちから遠いものだ」という旨の発言をされていますが、意外に日本人にとってそんなに遠いものではないのではないか?

アメリカのヒップホップとかロックをやるのも、日本の郷土芸能をそのままやるのも、どちらにしろ自分たちはネイティブではないから違和感が残る。だったら、自分たちが自然と学んできたものだけで勝負しようというスタンスになって、「ゼロから始める民族音楽」というコンセプトを立てたんです。

www.cinra.net

盛り上げようとして盛り上がっているのではなく、例えるなら生活する中で笑ったり興奮したりする、その様子となんら変わりないフロアの盛り上がりの光景を見て、どんな聴き手にも障壁が現れることがないだろう馬喰町バンドの広大な可能性を垣間見たのでした。